2.1. 「先に買う」ことのハードルと現実

住み替えを考える際、多くの方が理想として描くのが「先に新しい住まいを購入し、その後で現在の家を売却する」という流れでしょう。この方法は、気に入った物件を逃すことなく、慌てずに引っ越し準備を進められるという大きな魅力があります。

しかし、この「購入先行型」の戦略は、現実的には金銭的なハードルが非常に高い選択肢です。最大の障壁は、現在の住宅ローンが残っている場合に発生する「二重ローン」のリスクです。2つのローンを同時に返済していくには、それを十分に賄えるだけの高い収入や、多額の自己資金が不可欠となります。

金融機関の審査も当然厳しくなり、多くの方にとっては残念ながら現実的な選択肢とは言えません。そのため、理想と現実のギャップを理解した上で、より確実性の高い次の戦略を検討することが、住み替え成功への第一歩となります。

2.2. 「先に売る」ための戦略と京都特有の市場事情

そこで、ほとんどの場合において最も現実的かつ戦略的なアプローチとなるのが、「先に現在の家を売る」という方法です。この「売却先行型」は、売却によって得られる資金を明確にした上で次の購入計画を立てられるため、資金繰りの見通しが立ちやすく、精神的な安心感にも繋がります。

ただし、やみくもに売却活動を始めるだけでは不十分です。特に京都市中心部の市場は需要が高く、物件の供給が限られているため、買主は迅速な決断を求める傾向にあります。この市場特性を理解した上で、以下の2つのポイントを押さえることが成功の確率を高めます。

売却活動の最適な期間設定

売却の条件として設定する「引き渡しまでの期間」は、極めて重要な要素です。購入を希望される方の多くは、「良い物件があればすぐにでも入居したい」と考えています。そのため、引き渡し時期を半年後など長期に設定してしまうと、それだけで敬遠され、貴重な売却機会を逃すことになりかねません。私たちの経験上、買主様にとっても現実的に受け入れられやすい期間は、契約から「3ヶ月」程度です。この期間を目安に条件を設定することが、スムーズな売却交渉の鍵となります。

京都市中心部ならではの媒介契約の選択

不動産会社と結ぶ売却活動の契約には、1社に任せる「専任媒介契約」と、複数の会社に依頼できる「一般媒介契約」があります。京都市、特に中心部では、物件は単なる居住用としてだけ評価されるわけではありません。旺盛な観光需要を背景に、国内外の投資家や事業者が、ゲストハウスとしての可能性や「町家」ならではの歴史的価値を求めて物件を探す、もう一つの市場が存在します。こうした買主は、住居を探す方とは異なる価値基準で物件を評価するため、時に想定以上の価格で取引が成立する可能性を秘めています。

この専門的で、時に高値での売却に繋がる買主層へもれなく情報を届けるために、「専任媒介契約」が戦略的に有効となるのです。複数の不動産会社のネットワークを通じて広く告知することで、多様な購入希望者の目に触れる機会を最大化し、物件の価値を最も評価してくれる相手を見つけ出す確率を高めることができます。

売却戦略の骨子が固まれば、次はいよいよ「売却の完了」と「新居の購入」という2つのタイミングを、いかにスムーズに繋いでいくかという実践的なステップに進みます。