「昔はみんな、そうやった」では済まされない?長屋の境界線に潜む思わぬ問題 | 京都の不動産・売却のことならセンチュリー21ライフ住宅販売

「昔はみんな、そうやった」では済まされない?長屋の境界線に潜む思わぬ問題

見えている壁が、あなたの土地の境界とは限らない

古い京町家が連なる路地を歩いていると、隣家と壁一枚で繋がっている建物をよく見かけます。これらは「二戸一」や「長屋」と呼ばれ、かつては一本の柱や壁を隣家と共有していました。そして、その柱や壁の中心が、そのまま敷地の境界線(境界)となっているケースが非常に多かったのです。

ここからが、現代において問題が複雑化するポイントです。

会話の中で、ご高齢の所有者様が「昔の家はみんなそうやわ」とおっしゃっていました。まさにその通りで、当時はそれが当たり前でした。しかし、もし隣の家が先に解体されるとどうなるでしょう?

共有していた柱を半分に切るわけにはいません。多くの場合、解体する側は、共有の柱や壁をそのまま残し、その外側に新しい壁を作って更地にします。すると、残された側の家から見ると、目の前にある壁が「自分の家の壁」であり、そこが「境界」だと錯覚してしまうのです。

しかし、法的な境界線は、昔と変わらず、今や見えなくなった「共有していた柱の中心」にあります。つまり、見た目の壁と実際の境界との間に、数センチから十数センチのズレが生じている可能性があるのです。

売却時に直面する2つの大きな障壁

このわずかなズレが、売却の際に大きな障害となり得ます。主な問題点として、以下の2つが挙げられます。

  • 買主の納得と安心感が得られにくい点:買主側からすれば、「建て替えをしたら、お隣の壁の内側までが自分の敷地です」と言われても、すぐには納得しづらいでしょう。リフォームして住む場合でも、壁の所有権やメンテナンスの責任範囲が曖昧なままでは、安心して購入できません。
  • 資産価値の大幅な減少リスク:京都では、建築基準法上の「セットバック(敷地後退)」の問題も絡んできます。前面道路の幅が4メートル未満の場合、建て替えの際には道路の中心から2メートル後退させなければなりません。このセットバックでただでさえ敷地が削られる上に、境界線が曖昧だと、資産価値の算出が非常に難しくなり、結果的に売却価格が大きく下がってしまうことにも繋がりかねないのです。

思い込みを捨て、専門家と「事実」を確認する勇気

今回のケースでは、ブルーシートの下の壁がどうなっているのか、隣家が解体した際にどのような工事をしたのか、所有者様ご自身も正確には把握されていませんでした。雨漏りを防ぐための養生だと信じておられましたが、その壁の構造や所有権が、売却の成否を分ける重要なポイントになるのです。

「昔はこうだった」「たぶん大丈夫だろう」。その気持ちは痛いほどわかります。しかし、不動産は高額な資産であり、その取引は法律と契約に基づいた厳密なものです。特に、京都のように歴史的な建物が多く、複雑な権利関係が残る地域では、過去の慣習と現在のルールの違いを正しく理解し、客観的な事実に基づいて判断することが何よりも重要です。

もし、あなたが所有する不動産が長屋の一部であったり、お隣との境界に少しでも不安を感じたりするなら、まずは専門家にご相談ください。登記簿謄本や古い図面を確認し、必要であれば現地で境界を明示することで、見えなかったリスクを事前に解消することができます。

大切な資産を守り、次の世代へ価値を繋いでいくために。まずは「思い込み」という名のブルーシートを、専門家と一緒に剥がしてみることから始めてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

  • 岩佐 英治(いわさ えいじ)

    岩佐 英治(いわさ えいじ)

    スタッフプロフィール
  • 京都市「京町家相談員」登録
    京都市「空き家相談員」登録

    2003年株式会社ライフ住宅販売に入社、住宅仲介営業を経て管理部門へ。
    会社運営全般業務(人事・総務・物件販売企画)と並行して、空き家所有者や相続で不動産を取得された方への有効活用の提案を行う。センチュリー21では店舗部門の最高表彰である「センチュリオン」を3度獲得。
    現在は、営業マンのお客様に対して、ライフプランニングのご提案など「営業マンの手の届かない、かゆいところに手が届く存在」として、お客様の幸せな将来づくりをお手伝いをしています。

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